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2011年6月13日月曜日

図書館内乱 有川浩

図書館戦争シリーズの第2弾である。

前回、図書隊とメディア良化委員会との攻防とその図式を描き、その世界を我々に提示したが、今回はその世界に生きる図書隊のメンバーひとりひとりに焦点を当ててその人物像を掘り下げている。



笠原郁は図書特殊部隊員として働くことを両親に話せずにいるうち、その両親が娘の職場見学にやってくることとなりひと騒動・・・

図書特殊部隊・堂上班副班長の小牧幹久は幼なじみの中澤毬江との過去から現在までの関係と2人が巻き込まれる本に関する事件・・・

笠原郁と寮で同室の柴崎麻子に近づく朝比奈と名乗る男。言葉巧みに相手をやり込める柴崎に負けずに言葉をあやつり距離を縮めようとしてくる朝比奈の真意は・・・

笠原の同期で図書特殊部隊員として優秀な手塚光。仲たがいをして長らく音信不通だった兄、手塚慧の存在が手塚光の周囲に浮かんでくる。



登場人物それぞれの後ろにある彼らの事情がそれぞれの事件と共に浮かび上がってくる。
それは決して楽しい事柄ではなく、今の彼らのどこかしらに影を落としている。またそれらのことは他者がかかわることであり、歯がゆくも自分一人でどうにかできる問題ではないのだ。そう、あの柴崎麻子にしても、だ。

一方的な思い込み、相手の思い込み、強者から弱者へのものの見方、偏見、そして他者と自分との距離感の問題・・・
他者との関わり合いの中で誰にでも少しはありそうな問題がそれぞれの登場人物の抱える問題として描かれているのは、読んでいる者にとってはどこかしら共感できるものになっているのかもしれない。


第2弾の今作では図書隊内部にある対立構造もより深く描かれる。
図書館の原則と独立性を重視する原則派と図書館を行政の管理下におくべきとする行政派。この両派がなにかあれば対立しものごとがなかなかうまく進んでいかない状況にある。

両派とも図書を守るという意味では根は同じなのだが、考え方というか視点があまりにも違いすぎて相容れないものとなってしまっている。
物事をつい単眼的に見てしまい他者の意見・考えを認められなくなってしまう。

「俺に言わせりゃあんなものはなぁ・・・」

ってやつだね。

こうしたものの考え方が組織、そして国単位で起きてくると最終的には戦争というところまで行ってしまうのだろう。
民族問題にしても宗教問題にしても同じことだろう。
ちょっと聞く耳を持っていれば、ちょっと相手の立場になって考えてみれば、どうしようもないところまで進んでしまうことにはならないと思うのだが・・・


この両派に加えて第三の勢力、手塚光の兄、手塚慧が主催する図書館組織内にある研究会、「未来企画」も絡んできていよいよ話は佳境に入ってきそうな気配である。


そうした組織内外の問題が絡みつつ、基本軸である笠原郁と堂上篤との関係がどうなっていくのか・・・
あいかわらず近づきそうで近づかない微妙な距離感で話は進んでいくのだが、その部分だけは私の頭の中がピンク色になりそうな感じのあいかわらずの乙女チックに展開される。
だがそんな微妙な関係が続いていたのだがついにこの第2弾の話の最後に重大な秘密が暴露されてしまう。


さて、この先どうなることやら・・・

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