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2011年9月10日土曜日

ガニメデの優しい巨人 ジェイムズ・P・ホーガン

前作『星を継ぐもの』で人類がどこからやってきたのかをあっと驚く展開で解きほぐして来た著者が、更にその歩みを進め、人類がなぜ誕生したのか、というところまで踏み込んで描かれたのが本作である。




前作で発見された「チャーリー」と名付けられた5万年前の死体。
それはかつてこの太陽系に存在した惑星ミネルヴァの住人であり、そして地球人類の始祖となった者たちの仲間でもあったのだ。

調査の結果、月面で「チャーリー」とその仲間と思われる遺体や基地、道具類が発見され、彼らはルナリアンと呼ばれる。


チャーリーについての謎解きの、その結末の驚きと興奮がまだ冷めやらぬ時に、今度は木製最大の衛星ガニメデで2500万年前の異星人の宇宙船が氷の中から発見される。

その宇宙船で見つかった巨人の白骨。
彼らのことはガニメデで見つかった、ということでガニメアンと呼ばれるようになる。



更に驚かされるのが、ガニメデの宇宙船の正体をつきとめるために調査を行っていた木星探査隊に向かって未確認飛行物体がまっすぐ急接近してくるのだ。

なんとそれは2500万年前に飛び立ち、時空の歪みの中から現代に現れたガニメアンの宇宙船だったのだ。



もうこの展開だけでもわくわくしてしまう。
すでにチャーリーたちルナリアンが人類の祖先だということは前作でも描かれているのだが、更にそこへガニメアンが現れ、前作からある謎にどうかかわってくるのか。


約5万年前、ルナリアン同士の争いによって消滅したミネルヴァ。
それよりさらに古い、2500万年前のミネルヴァで栄えていたガニメアン文明。
太古の昔から現れた宇宙船「シャピアロン号」はなんの目的で母星を飛び立ったのか。
そして発見されたガニメデの宇宙船に地球上の生物が方舟のごとく積み込まれていたのは何のためなのか。


そうしたすべての謎が本作で解明されていく。



前作同様、科学的な文言や言葉が出てきて小難しい印象はあるけれど、文体が軽く楽観的な感じさえして読み進むのに難しくないと思う。

それに個人的には前作よりも読みやすく楽しめた気がする。
前作を昔々に1度読んだせいなのか???
それもあるかもしれないが、それよりも物語に登場してくるガニメアンたちがとても興味深かったからだと思う。
話が進むにつれてどんどん彼らのことがわかってくるのだが、なんと彼らには闘争心や競争心、人と争うという概念がまったくないのだ。
まさにタイトル通り、「ガニメデの優しい巨人」なのである。

しかしそんな優しいガニメアンたちなのだが、遠い昔に地球上で行った、ある言えない秘密があったのだ。
その秘密は物語の最後に明かされるのだが、そのことが人類の歴史のミッシングリンクにつながってくるのだ。


もう謎が解明されていくたびに先がどうなるか、久々に期待に胸ふくらませ読み進むことが出来た。
もう最後のハントとダンチェッカーのやり取りなんかはホントにドキドキさせられた。


そして最後の最後、エピローグでは宇宙の彼方から送られてきたメッセージに感動すら覚えてしまった。



そのエピローグが次の3作目の展開を予感させてくれる。

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