ひどく悲惨な話だ。
どこかの紹介欄には暗黒青春ミステリなどと書かれてあったが、確かにこの内容は暗黒と銘打つだけあって陰惨な結末を迎える物語になっている。
だが、桜庭一樹の文体のせいなのか、それほど暗い印象を受けなかったのは私だけだろうか。
どうも私はスレて素直に物語を読み進めないのかもしれない。おそらくメインの対象であろうと思われる若い世代のようにストレートにはついに読むことができなった。というのも登場人物の誰もがあまりに型にはまったように思えて誰にも感情移入できなったのだ。
現状にくすぶり続けそこから脱出を願う山田なぎさ。
だが、桜庭一樹の文体のせいなのか、それほど暗い印象を受けなかったのは私だけだろうか。
どうも私はスレて素直に物語を読み進めないのかもしれない。おそらくメインの対象であろうと思われる若い世代のようにストレートにはついに読むことができなった。というのも登場人物の誰もがあまりに型にはまったように思えて誰にも感情移入できなったのだ。
現状にくすぶり続けそこから脱出を願う山田なぎさ。
ひきこもりでネットの世界にどっぷりはまるその兄、山田友彦。
自分を人魚だと言い現実逃避の傾向があり急激に卑屈と媚びる性格が入り混じる海野藻屑。
教育という名の暴力によってそれが善だと刷り込まれている花名島。
他者を受け入れられず他者を理解できないにもかかわらず他者を求め叶わなければ全てを無しにしてしまう海野雅愛。
意図的にわかりやすいキャラクター設定にしているのかどうかは分からない。
しかも名前が「海野藻屑」って・・・
おそらく海野雅愛がふざけ気分でつけたといったことを言いたいのかもしれないが、この名前のおかげで私の頭の中では雅愛の姿がぽにょの父親、フジモトとなり、シリアスな気分を吹き飛ばしてしまった。まぁこれは桜庭一樹が悪いわけでも物語がダメなわけでもなく、私の想像力が単にふざけていただけなのかもしれないが・・・
で、この本って一応ライトノベルというジャンルに入るらしいが、ライトノベルってこんな感じなのだろうか・・・
まだ1冊しかこの作家の本を読んでいないのでなんとも言えないが、ストレートにわかりやすいのが特徴なのか・・・最近、ライトノベル出身の作家の活躍をよく見聞きするようになった。
この桜庭一樹をはじめ、「図書館戦争」の有川浩、「テンペスト」の池上永一、「天地明察」の沖方丁(うぶかたとう)等々・・・
この桜庭一樹をはじめ、「図書館戦争」の有川浩、「テンペスト」の池上永一、「天地明察」の沖方丁(うぶかたとう)等々・・・
直木賞なんてもらったり候補になったりで、偉い作家さんになるためのステップみたいになってるような・・・
別に何出身だろうが面白いお話を書いてもらえればいいのだけれど、このところのこのジャンル出身の作家さんはがんばってはりますな。
ただこのジャンルの人が書く文章って擬音や長音符の使い方が独特でちょっと慣れていない私には少々読みづらいところがある。その用法の正誤はわからないがこれまで読んできた本にはあまりみられなかった文体だけに戸惑いつつ読み進むという読書になってしまう。
でもそういえば先日読んだ筒井康隆なんかも似たような感じかもしれない。
いや筒井康隆の場合はちょっと違うか。筒井氏の場合は吃音が多用されていてそれによって狂気を表しているのだ。とはいえ読みづらいということでは共通しているのかもしれない・・・
でもそういえば先日読んだ筒井康隆なんかも似たような感じかもしれない。
いや筒井康隆の場合はちょっと違うか。筒井氏の場合は吃音が多用されていてそれによって狂気を表しているのだ。とはいえ読みづらいということでは共通しているのかもしれない・・・
「ライトノベル」というだけあって、文体は軽い。その軽さがこの物語の青春小説としての部分にはとても合っていると思う。
悲惨ともいえるテーマを重苦しい文体で表してしまうのはあまりに安直で読み進むのも辛いものになってしまう。ところが桜庭一樹の文体は、物語の底辺にある虐待や鬱屈した気持ちを普通の青春小説としての”軽さ”が巧みに覆い隠しており、悲惨さの中にも青春小説としての友情や若さゆえの悩みなどがちゃんと心に残るものとなっている。
悲惨ともいえるテーマを重苦しい文体で表してしまうのはあまりに安直で読み進むのも辛いものになってしまう。ところが桜庭一樹の文体は、物語の底辺にある虐待や鬱屈した気持ちを普通の青春小説としての”軽さ”が巧みに覆い隠しており、悲惨さの中にも青春小説としての友情や若さゆえの悩みなどがちゃんと心に残るものとなっている。
悲惨な出来事や残酷な描写といった重いものを軽やかな文体で覆う、この2層構造により楽しげな描写の中に滲み出てくる陰惨さをそこはかとなく感じる小説になっているのだと思う。
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