荒唐無稽な話だが大阪人が読むとあながち無きにしもあらず、と思ってしまう。
ウソの話を作るには綿密な調査と詳細図を作り土台をしっかりしたものにしておかないとどこかで破綻してしまう。
この物語も大きな嘘をきちんとした歴史公証・組織などの詳しい内情・仕組みなどをきちんと描いてフォローしているからこそ物語に没入していけるのだと思う。
豊臣が滅亡してから代々、男達の間だけに伝えられ続けてきた「大阪国」の秘密。
豊臣が滅亡してから代々、男達の間だけに伝えられ続けてきた「大阪国」の秘密。
父親から息子へ、そしてまたその息子へと今日まで世間に明るみになることなく伝えられてきたのだ。
そんなバカな、と誰もが思う。私もそんなことが可能なわけがない、と思いながら読み始めた。予想ではちょっとふざけた内容なのだろうと・・・。
ところが登場人物にふざけたやつはいるものの、物語自体はきわめて真面目に「大阪国」について描かれているのだ。
常々思っていたことだが、現在において伝統文化(祭りや風習)や伝統芸能と呼ばれているモノ。これらは今でこそ人々に崇められたり畏敬の念を抱いたりする重々しい存在となっているが、始まりはどうだったのだろうか。
歌舞伎にしても京都四条の河原でぼろっちい小屋で芝居をしていたのが発祥という説を聞いたことがあるし、無形文化財になるようなお祭りにしても始まりは当時の若者の悪ふざけから始まったものもあるのではないかと思うのだ。
で、この物語を読んでいて前から思っていたそんな考えを思い出してしまったのだ。
始めは大阪夏の陣で敗れた豊臣方の存在を徹底的に消去しようとした徳川方に対する反発心から秀頼の隠し子を守ろう(物語の最後に少し違うきっかけが語られるが)としたことからだ。それが代々年月を経ていくうち、秘密を守るためにいろいろな仕組みやものを作らなければならず、どんどんと大掛かりかつ重大なものとなってしまったのだ。
そうしたちょっとした「きっかけ」を利用されてしまうことで物語は大阪全停止するところまで突っ走ってしまうのだ。
このクライマックスに至る過程はワクワクしてスリリングな展開だ。思わず自分のところにも「しるし」があるのではないかと探しかけてしまう。物語の中の皆と一緒に環状線に乗って大阪城公園に行ってみたくなる!!!
この本を読みながら地下鉄谷町線に乗っていた。
目的地は谷町四丁目。もう少し南なら空堀通り商店街にも寄ったのだがそこからではちょっと遠い。残念、と思って南森町で堺筋線に乗り換えるために大日行の電車に乗る。
車内で本を読んでいて松平が天満橋あたりをうろついているところを読んでいたら、ちょうど電車が天満橋駅に到着した!
なんという偶然!!! 別に意図して読んでた訳でも電車に乗っていたわけでもないのでちょっと驚いたのとなんだか嬉しかったのとでひとりニヤニヤしていた。
また第六局副長の松平が地下通路出口の一つ、京橋口から出てきた時、周辺の様子が描写されているが、おもわず頭の中でその場所の風景を思い浮かべ、どのビルがそうなのか考え込んでしまった。
父親から息子へ伝承されていく、という設定上、母親含め女性がそれほどメインで出てこない。
でも出てこないからといって大阪の女性は蚊帳の外なのかといえばそうではないのだ。
これは基本父と息子の話なのだが、その関係を大きく包み込むのが母の、そして女性たちの愛なのだ。
固く口を閉ざして大阪国ごっこをしている子供のような男どもを全てを知った上で知らないふりを何百年も続けている女性たちのほうが我々男どもよりずっとオトナで敵わない存在なのだ。
「大阪国」のきっかけも実は女性なのだし・・・
この物語の主人公が住み主要な舞台となる空堀通り商店街。
松屋町筋から谷町筋を越えて上町筋に至る東西に800mもある大阪市中央区の商店街だ。
正確には松屋町筋から谷町筋までの間にある「空堀どーり商店街」と「はいからほり商店街」、そして谷町筋から上町筋までの「空堀商店街」、1本の筋にあるこの3つの商店街のことを指すらしい。
物語の中にも東京から来た会計検査院の調査員2名が「はいからほり商店街」の名前を見て「さすが大阪。だじゃれ?」というシーンが出てくる。
私自身、この空堀商店街(おそらくはいからほり商店街)を仕事先に向かうために何度か通ったことがある。
確かに話の中で説明されるように西から東に向かってずっと上り坂が続く(しかも結構急だったりする)買い物をするには結構ハードな商店街だ。
商店街自体はアーケードになっていてそれほど変わったものではない。下町のよくある商店街の風情だ。
でもその商店街から横道へちょっと入ると、そこはまた別世界に変わるのだ。
このあたりは第二次大戦時の空襲を免れて昔からの古い建物や長屋がそのまま残っている。きちんと区画整理などされていないために横道・脇道は真っ直ぐではなく迷路のようにあちこち曲がっている。
でもそうした迷路のような路地の奥に、古い家屋をリフォームしたお店がたくさんあるのだ。
そうしたお店を探検気分で探すのもこのあたりの新しい楽しみ方かもしれない。
で、何ヶ月か前のある日の空堀商店街を歩いていると何もなさそうな路地にたくさんの人が集まっている。集まっている人は年齢性別もバラバラでどこかの店に並んでいるワケでもなさそうなのだ。
なんだろうかと思いながら先に進んでいくとなにやら撮影用のカメラや機材を持った人・その周辺で慌ただしく動き回る人などがいた。
その時は「あぁなにか商店街のことで撮影があるねんな」くらいしか思ってなくてそのままそこを通過して帰ってきた。
でもよくよく考えるとアレってひょっとしたら「プリンセストヨトミ」の映画撮影だったのでは・・・
ということはあの時待っていたら綾瀬はるかとか中井貴一とかに会えたかもしれへんってこと???
めっちゃショック・・・
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