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2011年5月31日火曜日

プリンセストヨトミ 【Movie】

監督:鈴木雅之
脚本:相沢友子
出演:堤真一 中井貴一 綾瀬はるか 岡田将生


大坂夏の陣で豊臣家が滅んでから約400年間、ずっとある秘密を守り続けてきた大阪の男達と東京から来た会計検査院の調査員との攻防を軸に父と息子、そしてそれをそっと見守る母といった親子の絆を描いた万城目学の原作を映画化したものだ。

原作と映画、どちらを先にすればいいか、という話しがよく出てくる。
まぁそんなことは人それぞれ、好きにすればいいのだろうな、きっと。
原作をじっくり読んで物語の奥行きをきっちり掴んだ上で映画を観れば映画をより深く理解できるのだろう。また逆に映画を先に見てそのストーリー性に惹かれて原作を読んでよりその世界に浸りたいと思う人もいるだろう。
映画化の話がある前に読んだ人や原作があることを知らずに映画を観た人なんかはそんな論争自体、まったく関係の無いところにいてそれぞれが面白ければいいやん、と思っているに違いない。

なのでどっちが先でも私はいいと思うのだが・・・

以前、伊坂幸太郎原作の『ゴールデンスランバー』の映画の方をたまたま原作より先に観た。
なんせ原作を読んでいないから、映画の内容がどれだけ原作に忠実でどこが削られて、どこを変えているのか全くわからず、逆にそんなことを考えずに素直に映画を観ることができた。
また映画自体もそこそこ面白かったので不満もなく最後まで楽しんで観られたので、きっといい出来だったのだろう。

まぁでもちょっと物足りない部分や分かりにくいところがあったりしたので、原作を読んでみることにした。
原作を読むと映画はほぼ原作に忠実に作られていることが分かり(とはいっても小さな違いはたくさんあるが)、逆に映画の雰囲気が壊れなくて良かった、なんておかしな感想を持つことになる。

映画を観て、原作を読んできちんと自分の中の足りない部分を補完できて、この場合は幸せな関係を築くことができたと思う。



--で、『プリンセストヨトミ』だ(前置きながっ!!!)

『ゴールデンスランバー』とは逆に、先に原作を読み終わっていた。
映画化されるということはすでに知っていた。

原作はこのブログの別のところに感想を書いているので細かいところまでは書かないけれど、奇想天外な物語だけれど非常におもしろく、ひょっとしてこんなことありえるのでは、と思わせる設定と文章には圧倒されっぱなしで一気に読んでしまった。

そんな自分の中の面白本の中でもかなりの上位に入るこの物語が、どう映像化されたのかどうしても観たくて公開初日に映画館へ足を運んだ。


結論から言えば、原作を読んでいなければ父と息子の絆を描いた物語としてそれなりに面白く観ることができたと思うが、原作を読んだ身には突込みどころ満載の映画だった。

長編小説を2時間にまとめなければならないので仕方ない部分はあるのだろう。「大阪国」についての細かい背景説明などが省略されてしまっておりちょっとわかりにくくなってしまっていた。

また会計検査院の3人と大輔・茶子が関わり合うのがやたらと早い。
2つの物語軸が進んでいって徐々に近づき、交わらなければいけないのに・・・


それとこれは絶対綾瀬はるかを入れたいがための力技だと思うが、会計検査院の調査員、鳥居忠(♂)と旭ゲーンズブール(♀)の性別が逆になってしまっているのだ。
これにはちょっとまいってしまった。
これでは「大阪国」における女の役割・重要性を理解できる原作にあるラスト近くのシーンが入れられなくなり、そこに書かれていたほんとうの意味での「大阪国」の成り立ちやらがみごとにスルーされてしまうのだ。

男ゲーンズブールの岡田将生くんにはそれなりな別の役目を作ってはあったが、ちょっととってつけた感がありやはり無理があったような気がする。


あと、なにか映画的にすごい迫力シーンがあるわけでなく、ちょっと地味な上に一人ひとりのセリフが結構多くて少し説明口調になってしまっていたのが残念だった。


瓢箪のくだりももうちょっと原作の部分を入れて欲しかったかな・・・


とはいえ、原作を読んだ者としては、原作と比較して悪いところを見つけるような見方をするのではなく、映画で説明されていないところを原作から補完し、その上で原作との違いを楽しむ余裕があればずっと楽しく観られると思う。

映画として悪いものにはなっていないし、純粋に父と息子の話として観れば感動ものとしてきちんと観られる作品だと思う。
なんか散々言っといて説得力はないけれど、十分楽しめる作品だと思う。



それと、大阪人の私が観ておもしろかったのは、茶子が自転車に乗って蜂須賀組への殴り込みに向かうシーン。
大阪城の堀端・京阪電車との並走・大阪スカイビルを対岸に望む淀川の堤防etc・・・

彼女はどこへ向かって走っているのだろうか???

場面を順番につなぎあわせていくとかなりな走行距離になってあんな思いっきり走ってられへんと思うのだが・・・


茶子ちゃん元気やな~
さすがプリンセス!!!

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