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2011年8月12日金曜日

守護天使 上村佑

第2回日本ラブストーリー大賞を受賞した作品。

本作の主人公、須賀啓一はハゲでデブで糖尿病や痔も患う50歳のサラリーマン。
仙台で親族の会社で働いていたがリストラされ、職を求めて東京に一家で転居してきた。横浜の「さわやか若者支援塾」でカウンセラーの仕事を見つけるも収入は以前の半分以下になり家庭内での彼の地位は地に落てしまう(もともとあまり高い地位ではなかったが・・・)。

昔からの口癖が「まあ、仕方ない」である。




そんな須賀が通勤途中に偶然出会った、今時ではない純真無垢な女子高生、宮野涼子に50歳にして初めての電撃的な一目惚れをし、彼女を世間の全ての悪意から守るために一方的に「守護天使」となる決意をする。

一方的に恋をして、一方的に守護天使として彼女を守ろうとする。あくまで彼の行動は「一方的」であり宮野涼子には全く関係のないことなのだ。


そう、この「一方的」な彼の行動がおかしくもあり、また悲しくもあるのだ。

実際、宮野涼子には全く別のところから危機が迫ってくるのだが、その事で彼女のことを調べるためにこっそり後をつければストーカーに間違われたりして彼女自身にはとても守護天使とは思われなずに、ただの変態に間違われる始末なのだ。


ただ、須賀啓一は心から彼女に恋をして、その全てを投げ打って彼女を守るために奔走する。
その姿は哀れだけれど、ボロボロになりながらも、もう自分自身ではどうにもできないくらい打ちのめされたとしても、彼女を守ろうとする気持ちだけは失われない。
その姿にはちょっと勇気をもらえたような気がする(あくまでホンのちょっとそんな気がするだけだが・・・)。




須賀啓一の周りにいる人間もちょっとクセのある者ばかりだ。

佐々木大和はいじめで引きこもりになっていたのをカウンセラーとして会った啓一に救われ、啓一を心では慕っている。
ちょっとしたイケメンなのに未だ対人恐怖症を克服できず彼女も出来ずにいた。
偶然あるブログを見ることで啓一の守護天使の働きを手伝わされてしまう。

村岡は啓一の学生時代からの30年来の悪友で、なんだかんだと啓一につきまとってはさんざん振り回していく。啓一も迷惑しながらも彼との関係を断つことが出来ず腐れ縁が続いている。
めちゃくちゃな生き方をしてきているが、彼には彼なりの哲学や考え方があり、それに自分にふりかかる物事を何とかする能力にかけては眼を見張るものがある。

そして啓一がこの世で最も恐れ、どんな相手にも怯まない村岡すら逃げ出すのが、啓一の嫁、須賀勝子だ。
彼女が啓一の守護天使としての行動(モチロン嫁には内緒のこと)を怪しんで家出した啓一の跡を追いかけていく描写はおかしいけれど、とっても恐ろしいのだ。





最後まで啓一自身はあまり報われることはないのだが、彼の一途な行動が周りの人間を動かし、そして変えていくのを見ていると、この先ちょっとはいいことがありそうだな、と思わせてくれる。



キモくて、とてもラブストーリー大賞受賞って感じではないところばかりなのだが、一途な気持ちを貫こうとする啓一の姿は受賞に値するのかもしれない。

でもよくよく中身を読み返してみると、やっぱりキモいんだけれどね、彼は・・・

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