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2011年2月25日金曜日

夜は短し歩けよ乙女 森見登美彦

同じような妄想小説だが、「太陽の塔」より確実に言葉の使い方が洗練されており読みやすくなっている。


“先輩”が追っかける女の子を純真無垢な何も考えていない存在としておくことで、男の独りよがりの大妄想がどこまでもバカバカしく広がっていく対比が悲しくも面白い。





おかしいと笑いつつ現実世界の私を含む煮え切らない男の心の内が見事(?)に活描され過ぎて少し気恥ずかしい思いにもさせられる。
 あいかわらず豊富な言葉のボキャブラリーに乗っかって出てくる関西人的ノリ突っ込みのような文章がおかしく、電車の中で何度も「ククッ・・・」と笑いを堪えないといけなかった。

「自分よ自分、なにゆえ不毛に御活躍」
「恥を知れ! しかるのち死ね!」
「たらい一杯分の玉子酒を作ったと言っても過言ではない。・・・過言でした」

などなど、大風呂敷を広げてはすぐたたんでしまうような文章や自分自身に突っ込みを入れるような文章が多くみられ、わざとふざけているのか作者の性格が登場人物に反映されているのか、まぁどちらにしてもそうした表現がとても面白かった。


第三章 御都合主義者かく語りき」
(訂正:これは短編で第三話だったか・・・
全くそのとおりで御都合主義的な物語を書くのにわざわざ“御都合主義”とタイトルに入れるこの御都合主義者!
あげくに現実と妄想をごっちゃにする能力があるなどと先輩の口から語らせるとは・・・


先斗町での出会いと李白翁との飲み比べ、古本を賭けた火鍋大会、学園祭での偏屈王とプリンセス・ダルマの劇中劇・・・
いろんな人物やいろんなエピソードがごちゃまぜに出現するもラストに向かって収斂していく様は見事だと思う(御都合主義だが・・・)。


 一番面白かったエピソードは、やはり学園祭での出来事か。ゲリラ劇が登場するせいか、スピード感満点でちょっとしたハラハラ感もあり最も楽しみながら読むことが出来た。

2 件のコメント:

BARA さんのコメント...

こんにちは

「太陽の塔」は、男臭すぎて少し近寄り難かったけど
「歩けよ乙女」は、ほわほわとした雲の上のような感覚で読めました。
まさに、小説だからこそ描ける世界だと思うのです。

先輩=作者とも言うべき、曲者ならではの文体も
嫌味なくムフムフ読めてしまう。

ヒロインは、本来なら同姓である女性からは
嫌煙されがちなキャラなのに
小説の中ではいつも後姿を追ってる故か、読んでいる女子からも
恋焦がれる存在になっている気がする。

私は変な乗り物(名前忘れた)で飲み比べのシーンが好きです。

名もなき文芸部員 さんのコメント...

BARAさん、こんにちは!

コメントありがとうございます。

確かに「太陽の塔」は"私"の妄想だけの話でしかもそれが暴走するお話なので好き嫌い別れるかもしれませんね。
私は四条河原町での"ええじゃないか"パニックは面白かったですが・・・

「・・・歩けよ乙女」はまさに乙女が半分担当(?)しているのでアクの強さが薄められて、ほんわかとした不思議な恋愛ファンタジーとなったんだと思います。

あのヒロインは感情があるのかないのかよくわからない感じなのですがイイ味出していますよね。
「おともだちパンチ」がイイ!!!

李白さんのあの乗り物は「偽叡山電車」ではなかったですか?
私もあの3階建て電車に乗って偽電気ブランを飲んでみたいです。


長々書いてしまいましたが、またよろしくお願いします。