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2011年3月3日木曜日

警官の紋章 佐々木譲

北海道警シリーズ第3弾
一作目の『笑う警官』で起きた一連の事件によるダメージがまだ抜け切っていない北海道警に再び悪夢が!って感じ。






『笑う警官』で射殺命令まで出されてあやうく抹殺されるところだった津久井巡査部長。あのときはたまに携帯で連絡があったりするだけでずっと逃げ回っていたためどんなキャラクターなのかを含めあまり印象がなかった。
今回は逃げる側から追う立場となり勤務中に消息を絶った日比野巡査を追いかける。なので結構今回は登場回数も多く活躍しているのだがやはり彼のキャラがどんなのか分かりづらい。顔が思い浮かばないのだ。
佐伯警部補や新宮・小島などはわりと自分の中でイメージしやすかったのだが・・・

その小島巡査は今回サミット担当大臣の警護というこれまでと違う役目をおおせつかっている。
彼女から発せられる言葉は硬質で短く感情を排除した話し方は男性警官を思わせる。
でも、そんな彼女の心の中にはちゃんと女性が存在しそんな自分を茶化しつつもその声に従う、そんなギャップが魅力になっているのかもしれない。
佐伯警部補との関係がどうなっていくのか、今後の展開を期待したい。


この『警官の紋章』を読み終わっての印象は、

「えっ?これから始まるんじゃないの???」

というものだった。

確かに日比野巡査の復讐劇は終わったけれど、佐伯警部補が追っていた三庁合同によるやらせ事件はこれからが本番ではなかったのか。
悪いやつが判明しこれから次々明るみにでる、ということを含んでのこの終わり方なのか、それともこれは単なるプロローグに過ぎず、別の話でこの先の巨悪との対決が描かれるのか・・・
個人的には後者であってほしいと思う。この先がどうなるのか、相当な覚悟をして向かっていこうとする佐伯警部補の活躍を十分に堪能したいと思うのは私だけではないはずだ。

それにしても完結したと思われた『笑う警官』の物語の裏に更なる巨悪事件を潜り込ませるとは!!!
『笑う警官』を書いている時すでに考えられていたのか、それともあとから考えたのかはわからないがもしこれがあとから考えたのであれば辻褄あわせするのは大変だったのではないかと思う。
こうしたジャンルの話ではリアルな描写が求められるので、細部に不都合があると物語が成立しなくなってしまう。なので無理に後付すると既存の話を詳細に検討していかなくてはならずより大変な作業になるだろうと想像できる。
きっと佐々木譲は『笑う警官』を書いている時点で今回の話も含めた全体構想を練っていたのだろう。

いつも短い時間、日数でスピーディーに物語が展開し、飽きることなく最後まで一気に読ませてもらえた。
次を楽しみにしている。

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