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2011年12月12日月曜日

鎮火報 日明恩

これまであまり描かれることのなかった消防士の活動と日常をリアルに取り上げた物語であると同時に、ひとりの新人消防士が消防の現場での困難さ、理不尽さを経験し成長していく姿を彼目線で描いた物語になっている。
加えて、いろんな要素が盛り込まれていてそれぞれが楽しめるものになっている作品だ。

2011年11月12日土曜日

ベネッセアートサイト直島②

ベネッセハウスを離れて島の北東側へ向かう。

ここには本村の集落があり、古い町並みが残っている地区だ。

この本村地区に主に古い家を改装してインスタレーション作品にした「家プロジェクト」がある。

ベネッセアートサイト直島①

直島は岡山県玉野市の南、約3kmの瀬戸内海に浮かぶ、面積14.23km²の島である。

その直島にベネッセが「直島文化村構想」としてホテル・美術館が一体になったベネッセハウスを建設する。

やがて島の一部だったアート構想が本村地区に家プロジェクトがつくられ徐々にアートが島を活性化させていく。


そんなアートの島、直島を訪れてみた。

2011年11月7日月曜日

美女と竹林 森見登美彦

これは京都は桂にある竹林の伐採を目論んだ竹林好きの登美彦氏が右往左往、縦横無尽に暴走し妄想しまくるエッセイなのか???

とにかくだらだら、うだうだと一向に進まない伐採といかに登美彦氏が竹林好きであるかが伐採作業と同じくだらだらと書き連ねられているものである。

2011年11月4日金曜日

失われた町 三崎亜記

ある日突然、ひとつの町からそこに住むすべての住民が消え去ってしまう。
原因もなにもわからないまま繰り返される町の消滅。

そんな消滅によって大切な誰かを失った者たちは悲しむことすら禁じられたまま、どう生きていくのか。
少しズレた世界を描いた、不思議な雰囲気の物語である。

2011年11月3日木曜日

謎解きはディナーのあとで 東川篤哉

大富豪の令嬢が所轄の刑事となり殺人事件に遭遇するも、そのお嬢様の運転手兼執事の名探偵並みの推理力で事件の真相を解明していく。

2011年4月に本屋大賞を受賞した作品で、謎解き以上にお嬢様と執事のやりとりがおもしろい(?)モノになっている。

2011年10月25日火曜日

大山崎山荘のおもてなし 大山崎山荘美術館

昨夜からの雨もあがり少し晴れ間も出てきた日曜の朝。

フラっと出かけてみようと思って行き先を考えていたら、以前に駅のポスターで見た大山崎山荘美術館の『かんさいいすなう』展を思い出した。

いろんな作家の椅子を集め、実際に作品に座れるらしいその展覧会、オモシロそうだったので行ってみようと思ったら9月25日で終わっていた・・・


残念だったけど、今やっている企画展が『大山崎山荘のおもてなし 利休、モネの見立てた大茶会』というちょっと地味っぽいけど変わってて興味を惹かれる。

少しのんびりしに行ってみることにする。

2011年10月24日月曜日

塩の街 有川浩

突如飛来した塩の結晶体によって人々が塩化していく世界で必死に生き抜いていこうとする男女の姿を描いた物語。
有川浩のデビュー作で、ありえない設定に身近な恋愛モノを織り込んでの内容は、『図書館戦争』の原型がすでに出来ていたと言えなくもないか。

2011年10月16日日曜日

独白するユニバーサル横メルカトル 平山夢明

C10H14N2(ニコチン)と少年-乞食と老婆
Ωの聖餐
無垢の祈り
オペラントの肖像
卵男(エッグマン)
すまじき熱帯
独白するユニバーサル横メルカトル
怪物のような顔(フェース)の女と解けた時計のような頭(おつむ)の男

8つの短編からなる平山夢明のこの作品の内、「独白するユニバーサル横メルカトル」が第59回日本推理作家協会賞を受賞している。

2011年10月15日土曜日

九月が永遠に続けば 沼田まほかる

第5回ホラーサスペンス大賞受賞作だそうだが、それに惹かれたのではなく「沼田まほかる」という作家の作品を読もうと思って、今回これを選んで読んでみた。

ホントは「猫鳴り」を読もうと思っていたのだが・・・



高校生の一人息子を持つ母子家庭の母親、水沢佐知子が主人公の物語。
彼女の心の中の独白を中心に話が進んでいく。

2011年10月6日木曜日

別冊図書館戦争Ⅱ

「図書館戦争」から始まって行きつ戻りつ、なかなか前に進まない笠原郁と堂上篤の二人にこちらはハラハラしたりドキドキしたりで行く末を見守っていたのだが、ようやくなんとか収まるところに収まったようでひと安心。




とはいえ、彼ら以上に気になり続けていた二人がまだ残っている!!!

2011年10月2日日曜日

巨人たちの星 ジェイムズ・P・ホーガン

『星を継ぐもの』、『ガニメデの優しい巨人』に次ぐシリーズ第3弾だ。

前作で地球を飛び立ったシャピアロン号

自分たちが地球人類に対して過去に行った行為に後ろめたさと後悔を感じ、仲間がいると思われる星へ確証もなく旅立つ。

しかし彼方のその星からはシャピアロン号を迎えるメッセージが・・・

2011年9月10日土曜日

ガニメデの優しい巨人 ジェイムズ・P・ホーガン

前作『星を継ぐもの』で人類がどこからやってきたのかをあっと驚く展開で解きほぐして来た著者が、更にその歩みを進め、人類がなぜ誕生したのか、というところまで踏み込んで描かれたのが本作である。

2011年9月8日木曜日

星を継ぐもの ジェイムズ・P・ホーガン

実はこの小説、かなり昔、まだおぼこい学生だった頃に1度読んだことがある。
その頃マイブームだったと思われるSFや伝奇モノのひとつとして読んだのだと思う。
それからずっと、イイ印象を持ってずっと記憶にとどまっていたのだから、きっと当時の自分も面白く読んだのだと思う。

ただ、今回読んでみて当時読んでうっすら覚えていた内容の印象とは違っていたのは単なる記憶違いなのだろうか。

2011年8月28日日曜日

フェルメールからのラブレター展 京都市美術館


6月25日から始まっていて気になっていたのだがなかなか行けなかった『フェルメールからのラブレター展』を見るために京都へ行ってきた。




『フェルメールからのラブレター展』
2011年6月25日-10月16日
京都市美術館


2011年8月20日土曜日

別冊図書館戦争Ⅰ 有川浩

「図書館戦争」シリーズの第5弾である。

第4弾の『図書館革命』で晴れて付き合うこととなった堂上と郁。
でも、これまでもそうだったように、二人の関係は遅々として進展していかない。

2011年8月12日金曜日

守護天使 上村佑

第2回日本ラブストーリー大賞を受賞した作品。

本作の主人公、須賀啓一はハゲでデブで糖尿病や痔も患う50歳のサラリーマン。
仙台で親族の会社で働いていたがリストラされ、職を求めて東京に一家で転居してきた。横浜の「さわやか若者支援塾」でカウンセラーの仕事を見つけるも収入は以前の半分以下になり家庭内での彼の地位は地に落てしまう(もともとあまり高い地位ではなかったが・・・)。

昔からの口癖が「まあ、仕方ない」である。


2011年8月2日火曜日

契約 明野照葉

人の人生の頂点はいったいいつなのだろう。
もちろんその頂点の大きさ、やって来る時期は人それぞれなのだろうが・・・

たまに人生の良いことと悪いことはプラスマイナスゼロ、すなわちマイナスな悪いことがあったとしても人生の終焉までにはそれを相殺するだけのプラスの良いことが起きる、と人が言っているのを聞くことがある。

まぁそう思ったほうが悪いことが続いたときに先の希望を持って生きていられるし、あまりに良いことが続いても自分を戒めることができるのだろうな。

2011年8月1日月曜日

図書館革命 有川浩


原発テロが発生した。それを受け、著作の内容がテロに酷似しているとされた人気作家・当麻蔵人に身柄確保を目論む良化隊の影が迫る。
当麻を護るため、様々な策が講じられるが状況は悪化。郁たち図書隊は一発逆転の秘策を打つことに。しかし、その最中に堂上は重傷を負ってしまう。
動揺する郁。
そんな彼女に、堂上は任務の遂行を託すのだった―「お前はやれる」

表現の自由、そして恋の結末は・・・

2011年7月7日木曜日

巡査の休日 佐々木譲

前作『警官の紋章』から再び事件が続いていく。

前作で小島百合巡査が発砲し負傷を負わせ逮捕した婦女暴行殺人犯が警察病院から逃走するところから話が始まる。
そのタイミングで逮捕時に狙われていた村瀬香里にストーカー行為とも取れるメールが携帯に送られてくる。
すぐさま小島百合は村瀬香里の身辺警護を命じられる。

2011年7月3日日曜日

図書館危機 有川浩

「図書館戦争」シリーズの第3弾

今回は図書館内での痴漢行為とその犯人の追及、郁を含めた図書隊員の昇任試験に関わるドタバタ、有名若手俳優のインタビューがきっかけで起きる差別的用語についての攻防、そして地方都市で開催される美術展の挑発的な最優秀作品の展示をめぐる武力的攻防戦とその背景にある図書特殊部隊の苦労と活躍を描いている。

2011年6月13日月曜日

図書館内乱 有川浩

図書館戦争シリーズの第2弾である。

前回、図書隊とメディア良化委員会との攻防とその図式を描き、その世界を我々に提示したが、今回はその世界に生きる図書隊のメンバーひとりひとりに焦点を当ててその人物像を掘り下げている。

2011年6月5日日曜日

犯罪小説家 雫井脩介

デビュー作でミステリー系の新人賞を受賞し、3年後の5作目『凍て鶴』が日本クライム文学賞を受賞した新進作家の待居涼司。
その『凍て鶴』に映画化の話が持ち上がり、監督・脚本に選ばれたのが、天才的な嗅覚で物事の本質を独自の視点で切っていく人気脚本家の小野川充。
この二人の才能がぶつかりお互いがインスパイアされ素晴らしい作品が出来ると思われたのだが・・・

2011年5月31日火曜日

プリンセストヨトミ 【Movie】

監督:鈴木雅之
脚本:相沢友子
出演:堤真一 中井貴一 綾瀬はるか 岡田将生


大坂夏の陣で豊臣家が滅んでから約400年間、ずっとある秘密を守り続けてきた大阪の男達と東京から来た会計検査院の調査員との攻防を軸に父と息子、そしてそれをそっと見守る母といった親子の絆を描いた万城目学の原作を映画化したものだ。

2011年5月29日日曜日

田村はまだか 朝倉かすみ

場末のスナック「チャオ!」での小学校のクラス会の三次会。で久しぶりに集まった男女5人が到着が遅れている田村を待つ、というシチュエーションで作られた短編6つの連作。
田村を待つ間にそれぞれが心に引っかかっている過去の出来事がそれぞれの酔った時のつぶやきのように紹介されていく。

2011年5月19日木曜日

図書館戦争 有川浩

内容が残酷な本は本当に悪書なのか。何をもって記述が悪影響を与えると判断するのか。そして誰がそれを判断するのか。

良いか悪いかはあくまで誰かの主観であって客観的なものではない。もちろん個人的好き嫌いはどの本にもあるはずで、自分がいくらオモシロイと思っても他人の評価は高くないものなんていくらでも存在する。

2011年5月6日金曜日

プリンセス・トヨトミ 万城目学

ひさびさにわくわくしながらページをめくる小説に出会えた。
荒唐無稽な話だが大阪人が読むとあながち無きにしもあらず、と思ってしまう。
ウソの話を作るには綿密な調査と詳細図を作り土台をしっかりしたものにしておかないとどこかで破綻してしまう。
この物語も大きな嘘をきちんとした歴史公証・組織などの詳しい内情・仕組みなどをきちんと描いてフォローしているからこそ物語に没入していけるのだと思う。

2011年5月5日木曜日

ある小さなスズメの記録 クレア・キップス

人を慰め、愛し、叱った、誇り高きクラレンスの生涯


これは一人のイギリスの婦人が玄関先で拾った巣から落ちたスズメの雛を保護し育てた記録である。だから人間との関係性を誇張し無理に感動させようとする文章は見当たらない。あくまで記録に徹しスズメの様子を事細かく淡々と書き残したものだ。


2011年4月21日木曜日

わたしを離さないで カズオイシグロ

静かな、とても静かな作品だ。

介護人のキャシーによる過去の回想録として物語は進む。

キャシー・ルース・トミーが過ごしたヘールシャムでの話。

2011年4月18日月曜日

サクリファイス 近藤史恵

何年か前、深夜のテレビでツール・ド・フランスのダイジェスト版が放送されていたのを見て面白くてハマった覚えがある。ちょうどランス・アームストロングが連覇してた頃だ。
チームがあってそこに何人も所属しておりスプリントレースや山岳レース、タイムアタックなどいくつものステージを戦って総合優勝を狙う。
見始めたときにはルールも何もわからず、車列が一列になって走っていて違うチームなのに前に行かせたり行かせてもらったりしていることが不思議でしかたなかった。しばらく見ているとそれなりに彼らがチームプレイで走っていることに気付く。レース展開によっては彼らの中からステージ優勝する者が出てくるかもしれないが、彼らの仕事はチームの中のエースを勝たせることなのだ。だから彼らアシストは時に集団のペースを乱したり集団をひっぱったり、エースが勝つために自らを犠牲(サクリファイス)にするのだ。
そうしたアシストたちの集団の中の駆け引きがわかってくるとより一層レースを楽しんでみられるようになる。

この『サクリファイス』は日本のチームに所属しアシストとして走っている白石誓(しらいしちかう)からみたチーム内の人間模様とそこで起きる事件を描いた作品である。

2011年4月15日金曜日

ゴールデンスランバー 伊坂幸太郎

全編に漂う喪失感


でも執着心はなく、物事を諦観するかのような登場人物。


普段は自分自身でも感じられないけれど、街中に流れている音楽や何かの出来事、そして誰かのしぐさにその当時の情景がありありと思い出され、胸の奥がほんの少し苦しくなる。


グラスホッパー
アヒルと鴨のコインロッカー
そしてこのゴールデンスランバー等々・・・
伊坂幸太郎の小説といえばそんな雰囲気一杯の作品が多いように思う。




今回の物語も伊坂幸太郎独特の軽いタッチで進んでいく。
ただ起こる事件は首相暗殺というこれまでの話に比べてもかなり大きなものになっている。


2011年3月27日日曜日

タッポーチョ太平洋の奇跡 ドン・ジョーンズ

大場栄陸軍大尉
1944年2月、歩兵第18連隊衛生隊長としてサイパン島へ転出。その年の6月にアメリカ軍がサイパン島へ上陸、サイパン島守備隊の第43師団が全滅した後も生き残った兵を率いてタッポーチョ山を拠点にアメリカ軍に抗戦し続けた。そして日本の敗戦が決まった後も山を下りず、1945年11月27日に天羽少将による正式な降伏命令書を受け、12月1日に47名の兵士と共にアメリカ軍に投降した。

この本は、その大場大尉がアメリカ軍に投降するまで、常に死と隣り合わせのギリギリの状況が続いたジャングルの中で何のために戦うのか苦悩しながらも生き抜いた日々を描いたものである。


2011年3月16日水曜日

ダンシング・ヴァニティ 筒井康隆

やってくれるよ、まったく!!!

筒井康隆、齢77の超実験的小説『ダンシング・ヴァニティ』
読み始めて戸惑い、どこに連れて行かれるのか皆目見当もつかず、読み進むうちに混乱し、読み終わる頃にはすっかり憔悴してしまう問題作。

四畳半神話大系 森見登美彦

「太陽の塔」に続く森見登美彦の二作目の長編である。

四つの物語に分けてはいるもののこれはIFの物語で、主人公の”私”が選択するものによって起きる出来事を描いている、いわゆるパラレルワールドものといえる。

四つの話の中には同じような設定、セリフなどを微妙にズラして入れ込んであって、それがそれぞれの話に関わってくる。
膨大な言葉のボキャブラリーとその言葉による伏線張りまくりで独特の森見ワールドが展開される。

2011年3月13日日曜日

太陽の塔黄金の顔展 EXPO'70パビリオン



今年は岡本太郎生誕100年にあたる。
それを記念して太陽の塔の初代「黄金の顔」(1970年の大阪万博開催時から1992年の大改修まで)が展示されるというので万博記念公園にあるEXPO'70パビリオンに出かけてきた。


2011年3月6日日曜日

シンセミア 阿部和重

すごい小説だと思う。
文庫本で全4巻。その長さもかなりのものでそれはそれで読む側に身構えさせるだけのものはある。
でも大長編の物語なんて世の中には数えきれないくらいあるのでそのことだけでこの作品がすごいってことには決してならない。
この本のすごいところは、読んでいて自分がこの小説のどこに惹かれるのかまったくもってわからないにもかかわらず読み出したらどんどん引き込まれて止まらなくなってしまうところなのだ。
まぁあくまで個人的見解だけれど・・・

2011年3月4日金曜日

東京島 桐野夏生

もともと桐野夏生はちょっと苦手な作家だった。
あくまで個人的感想だが、どうも「女の性」というものが全面に出過ぎていて、読み進んでいくにつれ男の私にはなにか落ち着かないような重苦しい気分になってしまう理由からだった。

そんな避け続けてきた桐野夏生が書いた『東京島』を勇気(?)を出して読んでみたのだが、なんだかもやもやとした違和感が最初から最後まで拭いきれないまま読み終わってしまった。

2011年3月3日木曜日

警官の紋章 佐々木譲

北海道警シリーズ第3弾
一作目の『笑う警官』で起きた一連の事件によるダメージがまだ抜け切っていない北海道警に再び悪夢が!って感じ。




2011年3月1日火曜日

ねにもつタイプ 岸本佐知子

少し前に読み終わったので一つ一つの細かい内容まで覚えていないのでどこがどうだったかを書き記すのは難しいのだが、朧気ながらも残る記憶をひっぱり出してみることに。



2011年2月28日月曜日

ヒアアフター 【Movie】

監督:クリント・イーストウッド
脚本:ピーター・モーガン
出演:マット・デイモン セシル・ドゥ・フランス


死後の世界にとらわれてしまった3人の苦悩とそこからの立ち直りを描いたクリント・イーストウッド監督のヒューマンドラマ。



2011年2月27日日曜日

Op.ローズダスト 福井晴敏

新しい言葉を主人公達に求めさせている割りには古い言葉の羅列と義理人情(浪花節)といった昔から日本人が好んできた人情話がくどいほど出てきてちょっと食傷気味・・・





悪人 吉田修一

全編に渡って漂う息苦しくなるような焦燥感。

それぞれが持つ現状に満足できない焦り。

小さな嘘を重ね、友人に対して見栄をはる石橋佳代
実の母親を含め他者とのコミュニケーションをうまくもてず様々な思いを胸の内に押し込めていく。自分自身に苛立ちをおぼえるもののそれを解消する術をもたずギラギラしたものを内包している清水祐一。
紳士服量販店に勤め、若い頃にはいろいろと夢見ることもあったが日々の生活に流されいつの間にか年月を重ねあきらめと臆病さに染まってしまった馬込光代。
彼らは決して大きな望みを願い持つわけでなく、ほんの小さな幸せを願っているだけなのだ。
なのにその願いは掛け違ったボタンのようにどこかで違う破滅の方向へ向かうことになる。


砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない 桜庭一樹

ひどく悲惨な話だ。
どこかの紹介欄には暗黒青春ミステリなどと書かれてあったが、確かにこの内容は暗黒と銘打つだけあって陰惨な結末を迎える物語になっている。

強運の持ち主 瀬尾まいこ

日常生活の中にあるほのぼのとした出来事が描かれていて暖かい気分で読み進むことができた。でも、読んでいくうちに各話のオチ()がわかってしまい、せっかくのいい気分が少し萎んでしまってちょっと残念だった。



2011年2月25日金曜日

夜は短し歩けよ乙女 森見登美彦

同じような妄想小説だが、「太陽の塔」より確実に言葉の使い方が洗練されており読みやすくなっている。


“先輩”が追っかける女の子を純真無垢な何も考えていない存在としておくことで、男の独りよがりの大妄想がどこまでもバカバカしく広がっていく対比が悲しくも面白い。